森:今回は浜松市の鈴木康友市長をお迎えしました。浜松から小倉まで新幹線で4時間弱かかりますが、北九州の印象はいかがですか?

鈴木:私はいつも講演の時、浜松と北九州の共通点について話します。政令指定都市は20市ありますが、県庁所在地が15市、次に大都市近郊の都市が3市、県庁所在地ではなく大都市の恩恵も受けない、ないない尽くしの都市が浜松と北九州なのです。でもその2市は産業都市として発展してきた歴史があります。私の印象としては、やはり北九州は産業が集積している、そんな印象を持っています。

森:浜松市の製造品出荷額等は2兆円を超えており、地元の代表的な企業として自動車のスズキ、オートバイの本田技研工業、ヤマハ発動機、楽器のヤマハ、河合楽器製作所、光技術の浜松ホトニクスなどがあり、東海地域を代表する工業都市の1つとして発展されています。産業都市という特徴がまずあって、次に人口が集積し、都市としての魅力が加わってきたのが浜松と北九州の共通点ということですね。県庁所在地でない分、他の魅力で補うというか、発信していかないといけないという面でも、浜松と北九州は良く似ていると私も思います。

森:それでは、浜松市の産業政策について、力を入れている取り組みをお話いただければと思います。

鈴木:浜松の地方創生の一丁目一番地は産業政策です。4つの柱で産業政策に取り組んでいます。まず1つ目がイノベーションです。浜松市ではスズキさんなど、輸送用機器が主力になっています。でも自動車はこれから劇的に変わります。今までの車とは違ってエンジンを搭載した自動車は終わるということですから、劇的に変わると言えます。輸送用機器産業をどうするということがあります。そこで新たな産業を育てないといけないということで、次世代輸送用機器産業、環境・エネルギー、健康・医療産業、新農業、デジタルネットワーキング・コンテンツ産業、この6つを成長分野にしてこれからの成長市場・新産業の創出に取り組んでいます。

鈴木:2番目はやはり、企業が流動化しているなかで、放っておくと、浜松の企業も他に流出してしまうのではないかということで、特区を使って工業用地を確保し、そこに今、戦略的に企業誘致をしています。3つ目は浜松の企業、特に中小企業の海外ビジネス展開の支援です。中小企業の皆様の場合、ものすごい技術を持っていますし、本社が浜松にある中小企業が海外に行って成長しています。浜松にもジェトロの事務所を作ってもらって支援を受けています。4つ目が創業支援、ベンチャー育成です。これをやらないといけない。浜松は本田宗一郎さんが出てきたところですし、スズキさんもそうですね。みんな町工場からスタートしたベンチャーです。しかし現状では浜松市の開業率は全国平均以下なので、もう一度、浜松を創業の街にしないといけないということで創業支援にも力を入れています。

森:今回は浜松市の4つの取り組みを伺いました。なるほどなあという点がたくさんありました。市外からも企業に進出していただくということを意識しながらも、同時に地元企業の皆様にがんばってもらえる環境をいかに整えるか、地元企業が地元の工場をマザー工場として残しつつ、海外にも展開するのであればそれを支援するという方向性など、参考になりました。浜松市に負けないよう北九州市も産業政策に積極的に取り組んでいきたいと思います。