森: 本日は九州工業大学で宇宙工学がご専門の米本浩一教授です。はじめに世界のロケットを取り巻く環境について教えてください。
米本: 種子島だとかスペースシャトルの打上げはいわゆる使い捨て型のロケットという種類で、H2ABでいけばH2Aは約100億円、H2Bになると150億くらいかかります。1回の打上げで多くの経費を使ってしまうために宇宙に物を持って行くコストが非常に高くなります。NASA(アメリカ航空宇宙局)も2000年頃から、どういう風にして低コストで宇宙に行けるのかと作戦を練り直し、従来のNASA主導でなく民間活力を使った方がいいんじゃないかと考えて、いろんなプログラムで新しく参入したい民間企業が果たしてどこまで出来るか育成してきました。その成果として出てきたのがスペースエックスという会社です。
森: 電気自動車のテスラモーターズの創業者イーロン・マスク氏が立ち上げた会社ですね。
米本: そうです。またアメリカでは、スペースエックスもそうですが、これまでの使い捨てのロケットではなく、飛行機のように再利用できる宇宙輸送や宇宙旅行など新たなチャレンジもたくさん出てきています。
森: 宇宙開発の担い手が国家主導から民間企業に変わりつつある様子を伺いました。そうしたなか、米本先生たち九州工業大学のチームは既に再使用型ロケットの実験に成功されていると聞いています。取り組みを教えてください。
米本: 小倉南区平尾台で有翼ロケットという名称で飛行実験をさせて頂いています。この実験の意味は飛行機のように無人で飛ぶために必要な誘導制御的な技術分野にあります。これまで機体が燃えちゃった時もあったんですけども、それでもめげずにやってきまして、次のステップとして来年以降は飛行実験をアメリカのカリフォルニア州にあるモハメ砂漠という場所に移す予定です。今の実験機は重さが42キロ、全長1.7メートルと小ぶりで、飛行安全上、高度1キロ以下の実験など制約があるのですが、それだけだと自律航行の実験としては十分ではありません。今度アメリカに持って行く機体は重さが900キロ、全長が4.6メートルと一桁以上大きくなる機体なんですが、それを使えば高度6キロ以上近く上がるので、宇宙空間に行って戻ってくる自律航行の実証ができるのではないかという目標で今計画しているところです。
森: 凄いですね。私も北九州市議会の9月議会で米本先生たちがロケット開発に取り組まれていることを紹介させて頂き、次世代の航空宇宙産業を北九州市の新成長戦力の1つとして位置づけて市も応援してほしいと提案させて頂いております。
米本: ありがとうございます。
森: 最後に大学発ベンチャーとしての取り組みを伺います。
米本: 今年8月にスペースマジックという会社を登記しました。九州工業大学が幹事になって、将来型ロケット研究コンソーシアムを組織化しようとしています。この中に川崎重工、IHI、IHIエアロスペース、中国工業、東レカーボンマジックなどにも入っていますが、北九州市の会社にも支えて戴きたいと考えています。
森: 我が国を代表する企業の皆様と北九州の潜在力が一緒になると本当に楽しみです。私も出来る最大限の応援をさせて頂きます。どうもありがとうございました。