森: 草間さんの半生を伺って感じたことは、肉親との縁は決して大きくなかったけれども、周りの方に恵まれ、真っ直ぐに育った半生は素晴らしいなあと思いました。つまづいた時に励ましてくれた言葉や機会などがあれば、教えてください。

草間: 他人の縁に恵まれた半生だったと思います。高校で挫折、大学で挫折、就職で挫折しています。逃げてしまった自分がいて落ち込んでいる時、施設の園長から手紙が来て、その時に相田みつおさんの「人間だもの」という本が同封されていました。相田さんの詩は絶対肯定なんです。醜い自分でも良いかも。でも、人間だものって。私の中にスーッと入っていく言葉があって本に救われたこともありました。

森: 次に、子どもの自立や子どもが生き抜く力を社会全体でどう作っていくか、国も地方も重要だと思いますが、子どもたちを取り巻く環境についてどうお考えでしょうか。

草間: 子どもを見る時、社会的養護の観点からみると、かつては親の離婚、母親の入院、行方不明が施設に入所する3大理由だったのですが、今は虐待が背景にあります。子どもを取り巻く環境を3つの軸で捉えていくと、親子軸、親族軸、地域軸の3つがあります。昔は兄弟が多かった。近所の方も関わっていた。それで虐待などのリスクが回避されていたことが、子どもに関する環境の昔と今の違いではないでしょうか。

森: 北九州市でも子どもたちが放課後、学校で勉強する機会を作っていますが、家庭が不安定な子どもにとっては勉強以外に生活面も含めて周りの大人と関わる良い機会になっていると思います。

草間: そうですね。例えば、地域軸で言うと、子どもの拠点って何かと言うと、小学校じゃないかと。小学校の運動会を見てみると、おじいちゃん、おばあちゃん、ついこの間卒業したばかりの中学1年生まで来ます。それぐらい吸引力があります。この小学校という場を使って、子どもたちと地域を結ぶ場を作っていくことが可能ではないでしょうか。親子軸は、親と子が向かい合う時間をどうやって作っていくか。子どもたちも学校以外に塾など忙しいので、夏休みにキャンプなどを通じて親子関係を見つめていくような機会を作る。もちろん、子育てと働くこと、両立支援も大事ですね。

森: 今回の講演もそうですが、草間さんはご自身の生い立ちを広くお伝えになっている、いわゆるスピークアウト(Speak Out)をされていますが、そのきっかけになったことを教えてください。

草間: 私が松下政経塾に入塾しようとした時から意図して自分の体験を語るようになりました。政経塾に願書を出す際、「私の歩んできた道」というテーマで小論文を書きます。その時から私の体験を伝えることが社会的養護の必要性につながると、いろんな機会に発信してまいりました。政経塾時代、カナダで研修した時にスピークアウト(Speak Out)という言葉を知りました。辞書で引くと「堂々と話す」という意味であることも分かり、私はとても触発されました。

森: 本日はどうもありがとうございました。草間さんのこれからのますますのご活躍をお祈りします。