森: 北九州で活躍している方にご登場していただき、北九州の魅力を読者の皆様にお伝えする第2回の対談相手は染織家の築城則子さんです。まず、小倉織との出会いについて教えてください。

築城: 染織の道を歩み始めた頃、勉強のために骨董店に行っていた時に偶然、小倉織と出会いました。不思議な質感でした。縞の織物で木綿のように見えるが、絹かと思う光沢がある。これは何ですかと尋ねると小倉織と言われました。10センチ四方の小さな歯切れからは、江戸から明治はこうした袴だったと教えられて、自分の生まれ育った土地に、小倉織があったことを知って、それがとても魅力的な布だった。その出会いに感謝しています。

森: それでは、小倉織をどのように復元されたのでしょうか。

築城: 30年前はインターネットなどない時代ですから、文献を調べていくしかありませんでした。当時の博物館の学芸員の方に相談したり、福岡県の工業試験所に持ち込んで分析をしてもらい、糸使いが分かって復元しました。

築城: 小倉織は特徴があって非常に経糸(たていと)が多い。通常の織物の約3倍と言われています。一番大事なのは質感を保つこと。経糸が多くて密度があるので生地が地厚でしっかりする。経糸が多いのは織りにくいここの土地の人は織りにくいけど、縦の密度は妥協せず、織り続けた。その精神は絶対に学ばないといけないと思いました。

森: 2つ目のテーマに入ります。北九州からの文化・工芸の発信です。

築城: その土地の風土と気質を反映したものが、工芸になっています。そういう意味では、小倉織は経糸が多くで織りにくいのに、織って丈夫でしっかりした木綿織であることは、この土地のある種の気質を反映しているんですよね。華美ではなく、質実剛健というか、そういう日常の美しさと私はいつも小倉織を思っているのですが、ハレの日に振袖のように着ていくものではないけれど、本当に日常的ななかに美しいものを身に着けるという形で考えられていたものではないかと思います。

森: 技術の伝承ははいかがですか。

築城: 私も途絶えた時間の重みを実感しましたので、できるだけ続いてくれたらいいと思っています。若い人で小倉織を織りたいという人が門を叩いてくれて、その都度、うちの工房で一から勉強しはじめて、人にもよるのですが、3年から6年で卒業していって1人立ちしていくということで、今、独立して外で仕事をしている人が4名いますし、工房でも2人が勉強しています。

森: 最後にこれからの夢といいますか、小倉織を通じて伝えたいことはどんなことでしょうか?

築城: 誇りが持てるものっていうんでしょうか。私は、小倉織は大変美しいものと思いますし、それがこの土地に400年も続いていることを含めて先人たちへの尊敬と、それと非常に魅力的な織物を私たちの街が育んできたということに誇りをもってもらえるようなものを、私は現代に創りたいと思います。より多くのひとに小倉織の存在を知っていただき、誇りに思っていただければうれしいなと思います。